吉田漱の歌集『青い壁画』を読了。目に留まった歌を引いておきます。
・四重唱歌い来るにすれ違いその宵はほのぼのと部屋に戻りぬ
・淡々と街燈は照らしハレルヤに透り処女の声一人まじりぬ
・救いなき日々を生きると歎かえば何時よりか幼く求め合い来し
・失職を言いつくろいて雨に来ぬ持つ弁当も忽ちぬれて
・流れくる黒人(ニグロ)の聖歌に泪わく寝転びしままパンをむしりいて
・ルミナールを幾年飲みて堪えて来しかぼそき指を執りやりしのみ
・目茶苦茶に手術痕つきしを鏡見し夢なりき昏きに目ざむ
・病巣が固ることを願いとし朝々は華僑も静かに歩む
・幸福を図式に説きてしまいしに疑わず階を下りて行く音
・聖き夜歌う少女らの中にいて過ぎゆくはみな楽しかれと思う
・少女らの合唱は暗き灯のもとに高まりてゆくマリア・アベ・マリア
・金色の薫香器振られつづくなか異邦人のごと隅にきて坐る
・頰づきし会衆の何処にか君も居て手を拡げビゾンネット師祝福し給う
・聖体拝受(コミニオン)受ける少年ぬかづきて司祭の前にうなじ細く居り
・オルゴールの時計はゆるく鳴りしずみ湧く合唱に会衆と立つ
・閉したるチャペルをかこむ夜の梢ふかぶかとして芽吹きくる季(とき)
・怱忙(そうぼう)と日々の交りに移り来ぬ閃きて折々に責める声ありき
・テープリール戻して己の声を聞く夜ふかくして雪ふぶく刻
・自棄の言葉投げていくらか救われし若さは過ぎぬ君の上にも
・傷痕の長く私には曳くものを言葉まどい居るこのやさしさに
・繰返えし聖夜の曲の流れくる別れ来て壁に独りもたれぬ
・あたたかに窓より聖樹の光さす約すなかりき未来も逢いも
・苦しみを共に越えたと言う言葉救われて居るいく日かを後
・冬の雨閉じたる窓を流れつつ身をめぐりくる聖きオラトリオ
・職をすて生きんに夥しき軛ありて荒れし日常も十年に近し
・シニズムも擬態となりし饒舌に椅子ひきて想うみな遠き人のこと
・死にたるは死にてあらしめよ言いたりき我に向く言葉ならずとも
・四重唱歌い来るにすれ違いその宵はほのぼのと部屋に戻りぬ
・淡々と街燈は照らしハレルヤに透り処女の声一人まじりぬ
・救いなき日々を生きると歎かえば何時よりか幼く求め合い来し
・失職を言いつくろいて雨に来ぬ持つ弁当も忽ちぬれて
・流れくる黒人(ニグロ)の聖歌に泪わく寝転びしままパンをむしりいて
・ルミナールを幾年飲みて堪えて来しかぼそき指を執りやりしのみ
・目茶苦茶に手術痕つきしを鏡見し夢なりき昏きに目ざむ
・病巣が固ることを願いとし朝々は華僑も静かに歩む
・幸福を図式に説きてしまいしに疑わず階を下りて行く音
・聖き夜歌う少女らの中にいて過ぎゆくはみな楽しかれと思う
・少女らの合唱は暗き灯のもとに高まりてゆくマリア・アベ・マリア
・金色の薫香器振られつづくなか異邦人のごと隅にきて坐る
・頰づきし会衆の何処にか君も居て手を拡げビゾンネット師祝福し給う
・聖体拝受(コミニオン)受ける少年ぬかづきて司祭の前にうなじ細く居り
・オルゴールの時計はゆるく鳴りしずみ湧く合唱に会衆と立つ
・閉したるチャペルをかこむ夜の梢ふかぶかとして芽吹きくる季(とき)
・怱忙(そうぼう)と日々の交りに移り来ぬ閃きて折々に責める声ありき
・テープリール戻して己の声を聞く夜ふかくして雪ふぶく刻
・自棄の言葉投げていくらか救われし若さは過ぎぬ君の上にも
・傷痕の長く私には曳くものを言葉まどい居るこのやさしさに
・繰返えし聖夜の曲の流れくる別れ来て壁に独りもたれぬ
・あたたかに窓より聖樹の光さす約すなかりき未来も逢いも
・苦しみを共に越えたと言う言葉救われて居るいく日かを後
・冬の雨閉じたる窓を流れつつ身をめぐりくる聖きオラトリオ
・職をすて生きんに夥しき軛ありて荒れし日常も十年に近し
・シニズムも擬態となりし饒舌に椅子ひきて想うみな遠き人のこと
・死にたるは死にてあらしめよ言いたりき我に向く言葉ならずとも