遠山光栄の歌集『褐色の実』を読了。目に留まった歌を引いておきます。
・一杯の水をしんじつ冷たしと飲みゐるときにこの救あり
・歩みゐるわれのうしろに教会の鐘鳴りいでてこの坂の街
・抽斗に熊胆円をさぐりをりとほき日の母もかくせしことあり
・はかなきに似て身辺にきしむおと膝をくづせるときに聞きたり
・涓滴のおとたちしよりとりとめもなくて不安のながき夕ぐれ
・をとめらは双手(もろて)をひろげ祈りをり祈りゐる手にひかるロザリオ
・一重なる扉がありてうら若き修道女たちわれよりとほし
・しづまりて祈の声のやみしとき帰依なきわれが会堂にをり
・精神薄弱者の手に均されて黒き土そこにダリアが茎をたてをり
・針金を荷札にとほす手仕事を繰り返しゐる老人(おいびと)よりて
・小さなる善意まもりてゆかむのみ夕べ運河に油ただよふ
・さぐりのごとき微笑をただよはす人を同坐のわれのみてゐし
・いきほひの儘にすこしく左肩あげゐる吾が硝子戸にうつる
・をりをりに啓示のごとく閃きて丈低き漆もみぢありたり
・一杯の水をしんじつ冷たしと飲みゐるときにこの救あり
・歩みゐるわれのうしろに教会の鐘鳴りいでてこの坂の街
・抽斗に熊胆円をさぐりをりとほき日の母もかくせしことあり
・はかなきに似て身辺にきしむおと膝をくづせるときに聞きたり
・涓滴のおとたちしよりとりとめもなくて不安のながき夕ぐれ
・をとめらは双手(もろて)をひろげ祈りをり祈りゐる手にひかるロザリオ
・一重なる扉がありてうら若き修道女たちわれよりとほし
・しづまりて祈の声のやみしとき帰依なきわれが会堂にをり
・精神薄弱者の手に均されて黒き土そこにダリアが茎をたてをり
・針金を荷札にとほす手仕事を繰り返しゐる老人(おいびと)よりて
・小さなる善意まもりてゆかむのみ夕べ運河に油ただよふ
・さぐりのごとき微笑をただよはす人を同坐のわれのみてゐし
・いきほひの儘にすこしく左肩あげゐる吾が硝子戸にうつる
・をりをりに啓示のごとく閃きて丈低き漆もみぢありたり