『とこしへの川』より
竹山広の歌集『とこしへの川』を読了。目に留まった歌を引いておきます。 ・血だるまとなりて縋りつく看護婦を曳きずり走る暗き廊下を ・這状の四肢ひらき打つ裸身あり踏みまたがむとすれば喚きつ ・鼻梁削がれし友もわが手に起きあがる街のほろびを見とどけむため ・背なか一面皮膚はがれきし少年が失はず穿く新しき靴 ・申しわけのごとき傷ひとつ脇腹に忘れをりたる夜半疼きくる...
View Article『句集 長崎』より
夏の野に讃美歌唄ひ息絶えぬ/志田ろせん 被爆地の銀河焦げ居り祈る間も/志田浩 焼肌最後の乳をふくませて教会の鐘の祈り/笠富夫 サイダーをしゆくと口あけ原爆忌/清水基吉 人と会はず炎天に義手さらし来る/雨沢和翠 殻蝉の目が生きている原爆忌/古賀愛子 ひとり寝の耳をくすぐる雨月の蚊/坂口康二 あじさいの崩れて慈悲を知る齢/ 〃
View Article『微笑の空』より
伊藤一彦の歌集『微笑の空』を読了。目に留まった歌を引いておきます。 荒荒しき桜はなきかむらぎもの心の怒り呼び起すまでの 日の匂ひする明るき子やうやくに語り始むれば表情変はる 直接の暴言よりも遠巻きにささやかるるに苦しむと告ぐ よき長男よき委員長のこの生徒よく磨かれし嵌め殺し窓 家庭内殺人のニュース見る家家かつてのごとき暗がりあらず 笑ひもたぬゆゑ笑はるる樹の悩み聴きゐる夢のカウンセリング...
View Articleオペラ・ワークショップのご案内〜指揮者から見たオペラの世界
昨年12月に韮崎教会で開かれたクリスマスコンサートにご出演くださった ヴァイオリンの遠藤記代子さんから、オペラのワークショップのご案内のメールをいただきました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 私は2013年春に小さな室内管弦楽団を立ち上げました。...
View Article改作が果たして良いのか…?
礼拝の 途上わが家に 寄ってくれ アラセイトウを 置いて去る人 (とど) 2012年4月28日 作歌、2014年7月上旬 改作。 <改作前> 丈夫なる ストックの花 いただきぬ 臥り過ごせる 日曜の午 (とど)
View Article障害者文化展で入選しました。
9月4日〜8日まで開かれていた山梨県障害者文化展に出した短歌作品が〔入選〕をいただきました。 ************************* 遠くは近い 「どなたですか」身じろぎをせず君の問う抜け毛に帽子まとう私に キリスト教書店の所在尋ねきた会話がまさか終になるとは 小春日に隣村へと墓参り五十二歳で逝った仲間の 十年を納戸にしまっていた洋書読まないままに旧知に返す...
View Article#hitsujitanka
来年の年賀状を考える頃になりました。母のはサクッと仕上げたのですけれど、私の方は図案は考えてありますが肝心の自作の《羊短歌》が納得いくものができていません。 Twitterで昨年の正月から「羊」「未」にまつわる歌をメモってあったのを、覚え書きとしてこちらにも掲載しておきます。 ・夏が来る頃にはここを去つてゐる 未来完了で関はる職場/澤村斉美...
View Article一首鑑賞(5)…有沢螢の子らへの眼差し
キリストのてのひらの傷に触れたいと日曜学校の子ら求めたり 有沢螢『朱を奪ふ』 有沢はミッションスクールの中学か高校の教師を務めていたようだ。しかし有沢の短歌に見られる信仰心は、決してとりすました教条的なものではない。折々に生徒らを詠んだ歌が歌集に出てくるが、それらはヒリヒリした痛みを内包したものがほとんどである。 冒頭の短歌の前には、下記の二首が置かれている。...
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