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Channel: 水の門
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『樗風集』より

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村野次郎の歌集『樗風集』を読了。目に留まった歌を引いておきます。


・吹き立つる日の暮れの風庭に焚く手紙の反故をけし飛ばしけり
・わが腹は病みて鳴るらし田蛙の畔などにゐてくくみなくごと
・生きかぬる土に思ひの断ちがたくおのが畑と共に衰ふ
・畑の道夕靄おりぬねんごろに礼(いや)してゆきしこの里の人
・心ぐくうれひゐむよは面あげて街にみなぎる朝光(あさかげ)を見よ

・いとどしく夕空焼けて基督の教に人の死にし丘見ゆ
・天主堂夕かげふかし仰ぎ見る高牕いまだ日はのこりつつ
・日に曝(さ)れて立つ十字架にまつはりしいばらの花もなくなりにけり
・命あるものなりければこの堂の白き聖母(マリヤ)を人は拝みぬ
・山腹の土の静けさふみ来れば日にあらはなるおくつきどころ

・楡青葉さやぎすがしき朝風に近づきて来る修道女ふたり
・見えわたる冬の街空吹き曝(さ)れて教会堂のいりつ日寒し



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